目次
  1. はじめに:在庫管理の「ちょうどいい」が無い
  2. sphere-weightとは:載せるだけの在庫管理
  3. 技術の中身:ロードセル×ESP32×電池駆動
  4. PoCの現在地
  5. 製品化ロードマップ:在庫・発注の一元管理へ
  6. クラウドファンディングで製品化へ
  7. よくある質問(FAQ)
  8. まとめ
本記事について

本記事は、当社が自社製品として開発を進めている在庫管理IoT「sphere-weight(スフィアウェイト)」の開発記録です。掲載しているデバイス・画面のビジュアルは開発中のコンセプトイメージであり、実際の製品とは異なる場合があります。

はじめに:在庫管理の「ちょうどいい」が無い

きっかけは、あるお客様からいただいた「資材の在庫管理をなんとかしたい」というご相談でした。段ボールや梱包資材のような日々どんどん減っていく在庫は、今も多くの現場で目視と手作業で管理されています。数え忘れ、発注の遅れ、そして気づいたときには欠品——どこの現場でも起きている光景です。

既製のIoT在庫管理サービスも検討しました。しかし調べてみると、大規模導入を前提とした月額プランで小規模な現場には費用が合わないか、逆に汎用の小型スケール型で大きな資材やお客様ごとの運用に融通が利かないか、の二択に近い状況でした。「10〜30箇所くらいを、現場に合う形で、無理のない費用で見張りたい」——この「ちょうどいい」を埋める製品が見当たらないのです。

それなら、組込システムの開発会社である当社が自分たちで作ろう。そう決めて、重量センサー式の在庫管理IoT「sphere-weight」の開発を自社製品として始めました。

sphere-weightとは:載せるだけの在庫管理

白い重量センサーパッドの上に在庫容器が載り、WiFiの電波マークが表示されているコンセプトイメージ
コンセプトイメージ:容器を載せておくだけで残量を自動計測

sphere-weightのコンセプトは「現場の運用を一切変えない在庫管理」です。使い方は、在庫の容器や資材を重量センサー台に載せておく——それだけです。

  • 載せるだけ——バーコード読取も日々の入力も不要。重さから残量を自動換算します
  • 電池駆動・配線レス——電源工事が不要で、棚のレイアウトを変えずに設置できます
  • 毎日自動チェック&通知——1日1回、決まった時刻に残量を確認し、しきい値を下回るとメールなどでお知らせします

「リアルタイム監視ではなく1日1回」というのは意図的な割り切りです。段ボールや資材の在庫は分単位では動きません。チェック頻度を運用実態に合わせて絞ることで、後述するとおり電池だけで長期間動く設計が可能になり、導入のハードルが大きく下がります。

技術の中身:ロードセル×ESP32×電池駆動

天板・ロードセル・ESP32基板・単3電池・ベース筐体に分解された試作機の構成イメージ
試作機の構成イメージ:天板/ロードセル/制御基板/電池/筐体

ハードウェアは、実績のある枯れた部品だけで構成しています。

要素採用技術ポイント
計量 ロードセル+専用ADC(HX711) 体重計などで広く使われる高精度・低消費電力の定番構成。複数セルの切替にも対応
制御・通信 ESP32(WiFi内蔵マイコン) 計測から通知送信までワンチップ。安価で入手性がよく量産にも向く
電源 単3電池+ディープスリープ 普段は深い省電力状態で待機し、1日1回だけ起きて計測・送信。配線工事ゼロ
通知 メール/Web API 担当者へのメールに加え、既存の発注システムへJSONで直接連携できる設計

設計の要は電力収支です。WiFi接続は電力を食うため、常時接続のIoTデバイスは電池運用が困難です。sphere-weightは「起床→計測→判定→送信→スリープ」を短時間で終える動作サイクルに徹することで、稼働時間を1日あたり数十秒レベルに抑え、乾電池での長期運用を狙っています。実際にどこまで持つかは、今まさに実測で検証しているところです。

また計量面では、容器の重さ(風袋)を差し引いて残量に換算するキャリブレーションや、温度・経年によるゼロ点ドリフトへの補正など、「秤を現場に置きっぱなしにする」からこそ必要になる処理を作り込んでいます。

PoCの現在地

時計・センサーパッド・クラウド・メールが円環でつながる1日1回の自動チェックサイクルのイメージ
1日1回の自動チェックサイクル:起床→計測→判定→通知→スリープ

現在は、ご相談をいただいたお客様の現場で実際の資材を使って検証するPoC(実証実験)に向けて、試作機の開発を進めている段階です。ハードウェアは協力会社とともに回路・筐体の設計を固め、並行してファームウェアと通知バックエンドの実装を進めています。

PoCで確かめるのは、机上では答えが出ない次の3点です。

  • 計量の実用精度——実際の資材・容器で、発注判断に足る精度が出るか
  • 電池の実寿命——現場のWiFi環境で、電池交換なしにどれだけ運用できるか
  • 通知の実用性——「いつ・誰に・どう知らせれば」発注遅れが実際になくなるか

この結果をもとに量産設計へ進みます。試作機は回路を1枚の専用基板に集約し、ロードセルの本数や測定台のサイズ・材質を用途に合わせて変えられる構成を予定しており、資材・粉体・液体など幅広い在庫への横展開を見据えています。

製品化ロードマップ:在庫・発注の一元管理へ

複数の建物に設置されたセンサーパッドがクラウドにつながるネットワークのイメージイラスト
製品版のイメージ:複数拠点の在庫をクラウドで一元管理

PoCの「計って、知らせる」を出発点に、製品版では在庫データを業務に還元する機能を段階的に盛り込んでいきます。目指すのは、在庫の状況確認から発注、使用履歴の記録、先々の予測までをひとつの画面で完結できる一元管理システムです。

機能内容
通知の拡充 メールに加えチャットツールへの通知、複数宛先・複数しきい値(早期アラート)対応
自動発注 発注点を下回ったら発注データを自動作成し、Web APIで既存の発注フロー・購買システムへ連携。「気づいたら発注まで終わっている」を目指します
ダッシュボード 複数拠点・多品目の在庫状況をブラウザで一覧。在庫推移のグラフ化で「減り方」まで見える化
トレーサビリティ 毎日の計量履歴をそのまま入出庫の記録として蓄積。「いつ・どの拠点で・どれだけ使ったか」を後から遡って確認できます
分析・予測 日々の計量データから消費ペースを分析し、在庫切れ日の予測(需要予測)や発注点・発注量の最適化を提案

毎日の計量値は、それ自体が現場の消費実態を写した時系列データです。ただ通知するだけでなく、蓄積したデータを需要予測や発注最適化につなげていくところに、AI・データ分析を手がけてきた当社らしさを出していきます。

クラウドファンディングで製品化へ

sphere-weightの量産・製品化にあたっては、クラウドファンディングの活用を予定しています。開発の様子をオープンにしながら、「うちの現場でも使いたい」という声を集め、支援いただいた方には先行導入の形でお届けする——そんな進め方を準備しています。

「在庫の数え忘れをなくしたい」「PoCに参加してみたい」「クラウドファンディングが始まったら知りたい」という方は、ぜひお問い合わせフォームからご連絡ください。プロジェクトの進捗は本ブログでも継続して発信していきます。

よくある質問(FAQ)

Q. 既製の在庫管理サービスと何が違うのですか?
A. 「容器を載せておくだけ」に機能を絞り、バーコード読取や日々の入力を一切なくした点です。電池駆動・配線レスで現場のレイアウトを変えずに設置でき、通知先やしきい値もお客様の運用に合わせて柔軟に対応します。中小規模の現場でも導入しやすい構成・価格を目指しています。
Q. どんな在庫・現場に向いていますか?
A. 粉体・液体・小さな部品・梱包資材など、「数えるのが面倒」「気づいたら切れている」タイプの在庫に向いています。研究所・工場・倉庫・店舗バックヤードなど、屋内でWiFiが届く場所であれば設置できます。
Q. いつから使えますか?
A. 現在はお客様の現場での実証(PoC)に向けて試作機を開発している段階です。製品化はクラウドファンディングの活用を予定しています。先行導入やPoCへのご参加にご興味があれば、お問い合わせフォームからご連絡ください。

まとめ

在庫管理の現場には、大規模向けサービスと汎用品のあいだに「ちょうどいい」の空白があります。sphere-weightは、載せるだけ・電池駆動・毎日自動チェックというシンプルさでその空白を埋めにいく、当社の新しい自社製品です。

まずはPoCで計量精度・電池寿命・通知の実用性を検証し、自動発注・ダッシュボード・トレーサビリティ・需要予測まで在庫と発注を一元管理する製品版へ——クラウドファンディングを通じて、開発の過程もオープンにお見せしていく予定です。続報をどうぞお楽しみに。

なお当社では、sphere-weightのようなセンサー×マイコン×クラウドのIoTシステム開発を、企画段階のPoCから量産まで一貫してお手伝いしています。「現場のこの作業、自動で見張れないか?」という段階のご相談も歓迎です。